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るいはあっても具体的でない計画がみられる。
以下に、地震災害を対象にした場合の把握すべき自然的・社会的条件を例示する。
?災害誘因の特性
当該地域に影響を及ぼす可能性のある地震の特性(活断層の特性を含む)
?災害素因の特性
災害の受けやすさの原因となっているものの特徴・性質。自然的素因と社会的素因に分けることができる。
ア.自然的素因の特性
軟弱地盤、急傾斜地などの規模・程度・分布状況
イ.社会的素因の特性
老朽木造密集地、水利不足地域などの規模・程度・分布状況。また、災害弱者などの状況
?地震災害履歴
災害履歴から当該地域の地震災害の癖を把握する
?土地利用の変遷
災害素因の集積・拡大過程を動的に把握し、近未来の傾向を探る
?災害抑止要因の特性
防災関係機関・住民における防災体制、防災施設・手段、耐震住家、耐震ライフライン、オープンスペースなど災害抑止力となる体制・施設・空間・手段の整備状況
?〜?を完全に把握するのは資料の関係で困難も考えられるが、少なくとも?、?と?は把握しておく必要がある(なお、?は総則ではその概要を記述し、詳細は災害予防計画、災害応急対策計画の中で記述するのが適当である)。
なかでも、?の災害素因については、当該地域の防災関係機関や住民が具体的な対策を考えることのできる程度の精度で「どこが、どのように危険であるか」を把握する必要がある。例えば市町村では地図縮尺で1万分の1程度の詳しさが必要である。
この縮尺では住家一戸々々が識別できるため、住民一人々々が防災を自分の問題として捉えることができるし、市町村はきめの細かな防災対策が可能となる。残念ながら、このような精度で災害素因を把握している市町村は多くはない。
(2)問題点2:想定される被害程度が示されていない(1)で述べた当該地域の自然的・社会的条件を具体的に把握できれば、実践的な地域防災計画の策定は7割方可能になったといえる。
さらに地域防災計画の実践性を高めるには、当該地域において想定される被害程度を示す必要がある。これらが示されることにより、計画の目標・達成方法・時期などを具体的に考えられるようになるからである。
ところで、被害程度を把握するには、(1)で述べた当該地域の自然的・社会的条件のもとで地震が発生した場合、どこにどの程度の被害が生じるのか、人命損失・生活障害・経済損失はどの程度になるのか等の作業が必要である。
この種の作業は「被害想定」と言われているものであるが、地震災害に関する被害想定の実施状況は、最新の資料では都道府県で22団体(46.8%)、市町村で121団体(3.7%)である。
このように、都道府県レベルでは、被害想定は比較的実施されているのであるが、その結果の多くは市町村レベルで活用するには粗すぎること、また、市町村での被害

 

 

 

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